日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


観心本尊抄 5 一念三千の情・非情


第4章 一念三千の情・非情

【問うて曰く、百界千如と一念三千と差別如何。】
それでは、質問しますが、百界千如と一念三千とは、どう違うのでしょうか。

【答へて曰く、百界千如は有情〔うじょう〕界に限り、】
それに答えると、百界千如は、有情界に限り、

【一念三千は情非情に亘〔わた〕る。
一念三千は、情非情にわたるのです。

【不審して云はく、非情に十如是亘らば】
それは、違うでしょう。非情にまで十如是がわたり因果が具わるのであれば、

【草木に心有って有情の如く成仏を為すべきや如何。】
草木にも心が有って有情と同じように成仏すると言うのですか。

【答へて曰く、此の事難信難解〔なんしんなんげ〕なり。】
それに答えると、これは、大変、信じ難く、なかなか理解出来ない事なのです。

【天台の難信難解に二有り、一には教門〔きょうもん〕の難信難解、】
天台の難信難解には、二つあり、一つは教門の難信難解、

【二には観門〔かんもん〕の難信難解なり。其〔そ〕の教門の難信難解とは、】
二には観門の難信難解なのです。その教門の難信難解とは、

【一仏の所説〔しょせつ〕に於て爾前〔にぜん〕の諸経には、】
爾前経で

【二乗〔にじょう〕・闡提〔せんだい〕は未来に永く成仏せず、】
二乗と一闡提は未来永久に成仏しないと説き、

【教主釈尊は始めて正覚〔しょうがく〕を成ず、】
また教主釈尊はこの世で始めて成仏したと説きました。

【法華経迹本二門に来至して】
しかし、法華経迹門では、二乗と一闡提の成仏を説き、

【彼の二説を壊〔やぶ〕る、】
また本門では、始成正覚を破って久遠実成を説き顕わしているのです。

【一仏二言】
このように爾前と法華経では、説がまったく違うので一仏が二言となり、

【水火なり、誰人か之〔これ〕を信ぜん。】
水と火のような矛盾した関係になって誰も信ずる事が出来ないのです。

【此は教門の難信難解なり。観門の難信難解とは百界千如一念三千にして、】
これが教門の難信難解です。また観門の難信難解とは、百界千如一念三千であり、

【非情の上の色心〔しきしん〕の二法の十如是是〔これ〕なり。】
非情界に色心の二法、十如是を具していると説く点です。

【爾〔しか〕りと雖も木画〔もくえ〕の二像に於ては、】
しかし、この点が難信難解であるからと言っても、

【外典内典共に之を許して本尊と為す、】
木像や画像を外道でも仏教の各宗派でも、これを本尊として崇めているでしょう。

【其の義に於ては天台一家より出でたれども、】
その意義については、それは天台宗の一念三千より出たのであり、

【草木の上に色心の因果を置かずんば、】
非情の草木の上に色心の因果を置かなければ、

【木画の像を本尊に恃〔たの〕み奉〔たてまつ〕ること無益〔むやく〕なり。】
木画の像を本尊として崇める事は、まったく無意味となるからなのです。

【疑って云はく、】
いやいや、それは間違いでしょう。

【草木国土の上の十如是の因果の二法は】
それでは、草木や国土の上の十如是の因果の二法は、

【何〔いず〕れの文に出でたるや。答へて曰く、】
いったい何に書かれているのですか。それでは、それに答えましょう。

【止観第五に云はく「国土世間亦〔また〕十種の法を具す。】
摩訶止観の第五に「非情の国土にも十如是がある故に、

【所以〔いわゆる〕悪国土、相・性・体・力」等】
悪国土には、悪国土の相、悪国土の性、悪国土の体、悪国土の力など、

【云云。】
それぞれの十如是を具しているのである」と書かれているのです。

【釈籤〔しゃくせん〕第六に云はく「相は唯〔ただ〕色〔しき〕に在り、】
釈籤の第六には「相とは、ただ外面に顕われた物質であり、

【性は唯〔ただ〕心〔しん〕に在り、】
性とは、内在する性質であり、心である。

【体・力・】
また体とは、物の本体で色心を兼ね、力とは外に応ずる内在性で、

【作・縁は】
作とは外部への活動で、縁とは善悪の事態を生ずる助縁であり、

【義色心〔ぎしきしん〕を兼ね、因果は唯心、】
これらは、すべて色心の二法を兼ねており、因と果とは、ただ心にあり、

【報は唯色に在り」等云云。金□論〔こんべいろん〕に云はく】
報とは、ただ身体と言う色法となる」と説かれています。また金□論には

【「乃〔すなわ〕ち是〔これ〕一草・一木・一礫〔りゃく〕・一塵〔じん〕、】
「一本の草、一本の木、一つの礫、一つの塵など、

【各〔おのおの〕一仏性・各一因果あり】
すべて、ことごとく一つの仏性、一つの因果が具わっているのです。

【縁了〔えんりょう〕を具足す」等】
ようするに、すべては、本有常住の三因仏性を具足しており、

【云云。】
有情非情を問わず成仏するのである」と説かれているのです。


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