御書研鑚の集い 御書研鑽資料
観心本尊抄 20 文底下種の本尊
第19章 文底下種の本尊
【此の本門の肝心、南無妙法蓮華経の五字に於ては】
この法華経の本門の最重要である南無妙法蓮華経の五字を
【仏猶〔なお〕文殊薬王等にも之を付属したまはず、】
釈迦牟尼仏は文殊や薬王などにも付属してはいないのです。
【何〔いか〕に況〔いわ〕んや其の已外〔いげ〕をや。】
それなのにどうして、それ以外の普通の弟子にこれを付属する事があるでしょうか。
【但〔ただ〕地涌千界を召して八品を説いて】
ただ地涌千界の上行菩薩に対して涌出品から嘱累品に至る八品の間に、
【之を付属したまふ。其の本尊の為体〔ていたらく〕、】
これを付属したのです。この文底下種の大御本尊の姿は、
【本師の娑婆の上に宝塔空〔くう〕に居〔こ〕し、】
久遠元初の本仏が出現される末法の娑婆世界の上に宝塔として曼荼羅の姿で存在し、
【塔中〔たっちゅう〕の妙法蓮華経の左右に釈迦牟尼仏・多宝仏、】
その宝塔の中において、妙法蓮華経の左右に釈迦牟尼仏と多宝如来があって、
【釈尊の脇士〔きょうじ〕上行等の四菩薩、】
その釈尊の脇士には上行などの地涌の四菩薩が並び、
【文殊・弥勒等は四菩薩の眷属〔けんぞく〕として末座に居し、】
文殊や弥勒などの迹化の菩薩は、本化四菩薩の眷属として末座にあって、
【迹化〔しゃっけ〕・他方の大小の諸菩薩は】
その迹化の菩薩や他の国土の菩薩は、
【万民の大地に処〔しょ〕して雲閣〔うんかく〕月閣〔げっけい〕を見るが如く、】
万民が大地にひれ伏して雲や月を仰ぎ見るように手を合わせ、
【十方の諸仏は大地の上に処したまふ。】
十方から集まった分身の諸仏は、大地の上で居住まいを正したのです。
【迹仏迹土を表する故なり。】
それは、ひとえに迹仏、迹土を現す為なのです。
【是くの如き本尊は】
このような尊極無比の大御本尊は、法華経に至るまでは、
【在世五十余年に之〔これ〕無し、】
在世五十余年の説法にまったく現れなかったのです。
【八年の間】
法華経八年の説法の間にも涌出品から嘱累品に至る
【但〔ただ〕八品に限る。】
ただ八品の間にだけ、これを説き現して上行菩薩に付属されたのです。
【正像二千年の間は小乗の釈尊は迦葉・阿難を脇士と為〔な〕し、】
正像二千年の間には、小乗の釈尊は迦葉と阿難を脇士として本尊とし、
【権大乗並びに涅槃・法華経の迹門等の釈尊は】
権大乗や涅槃経、法華経迹門などの釈尊は、
【文殊・普賢等を以て脇士と為す。】
文殊や普賢などの菩薩を脇士として本尊とされました。
【此等の仏をば正像に造り画〔えが〕けども】
これらの仏は、正法、像法時代に作り描かれましたが、
【未〔いま〕だ寿量の仏有〔ましま〕さず。】
未だ寿量品に説かれた本尊は、建立されていないのです。
【末法に来入して始めて此の仏像出現せしむべきか。】
末法に至って初めて本門寿量品文底下種の大御本尊が建立されるのです。