日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


観心本尊抄 11 仏界を明かす


第10章 仏界を明かす

【問うて曰く、十界互具の仏語分明なり。】
それでは質問しますが、たしかに十界互具が仏の説である事はわかりました。

【然〔しか〕りと雖も我等が劣心〔れっしん〕に】
しかし、私達のような者に

【仏法界を具すること信を取り難き者なり。】
仏法界が具わっている事などとても信じられません。

【今の時之を信ぜずば】
もし、そんな事を信じるようでは、自らを仏と同じであると言う

【必ず一闡提〔いっせんだい〕と成らん。】
一闡提とまったく変わりないではないでしょうか。

【願はくは大慈悲を起〔お〕こして之を信ぜしめ】
もし、そうでないならば、大慈悲によってこの事を信じさせて

【阿鼻〔あび〕の苦を救護〔くご〕したまへ。】
無間地獄の苦悩から救って頂きたいものです。

【答へて曰く、】
それでは、その事について答えましょう。

【汝〔なんじ〕既〔すで〕に唯一大事因縁〔ゆいいちだいじいんねん〕の経文を】
あなたは、すでに方便品の一大事因縁を説かれた経文に

【見聞〔けんもん〕して之を】
衆生に仏知見があると説かれている事を知りながら、

【信ぜざれば、】
これを信じないと言うのであれば、

【釈尊より已下の四依〔しえ〕の菩薩並びに末代理即〔りそく〕の我等、】
釈尊の言葉を信じないのですから、末法の菩薩やただの凡夫である私達が、

【如何が汝が不信を救護〔くご〕せんや。】
あなたが信じないのを助ける事など出来ないのは当然の事なのです。

【然りと雖〔いえど〕も試みに之を言はん、】
しかしながら、試みに、もう少し人界所具の仏界を説明してみましょう。

【仏に値〔あ〕ひたてまつりて覚〔さと〕らざる者、】
なぜなら、釈尊に会っても悟らなかった者が

【阿難〔あなん〕等の辺にして】
阿難によって悟りを得たので、

【得道する者之有ればなり。】
あなたに説明してわからせる事が一概に無理とは言えないからです。

【其れ機に二有り。】
衆生には、二種類の機根があって

【一には仏を見たてまつりて法華にして得道す、】
一には、仏に会って直接の教えを受け法華経によって得道する者、

【二には仏を見たてまつらざれども法華にて得道するなり。】
二には、仏には会わないけれども法華経によって得道する者です。

【其の上仏教已前〔いぜん〕は漢土の道士・月支〔がっし〕の外道は、】
しかも仏教以前の時代では、中国の道士が説く儒教やインドの外道の

【儒教・四韋陀〔しいだ〕等を以〔もっ〕て】
四韋陀という教えであっても、

【縁と為〔な〕して正見〔しょうけん〕に入る者之有り。】
それが縁となって法華経の正しい仏知見へと入ることが出来たのです。

【又利根〔りこん〕の菩薩凡夫等の、】
また、賢い菩薩や凡夫などは、

【華厳・方等・般若等の諸大乗経を聞きし縁を以て】
華厳、方等、般若などの諸大乗経を聞いた事によって、

【大通久遠の】
すでに過去に於いて大通智勝仏の時代に法華経を聞き、

【下種を顕示〔けんじ〕する者多々〔たた〕なり。】
下種を受けた事を思い出した者が大勢いたのです。

【例せば独覚〔どっかく〕の】
たとえば、独覚の人は、仏のいない世に生まれて、

【飛花落葉〔ひけらくよう〕の如し、】
飛花落葉などを見て無上観の極地を悟る事が出来るようなものなのです。

【教外〔きょうげ〕の得道是なり。】
この事を教外の得道というのです。

【過去の下種結縁無き者の権小に執着〔しゅうじゃく〕する者は、】
逆に、もし、過去世において法華経の下種がなく結縁がない者は、

【設〔たと〕ひ法華経に値ひ奉れども】
たとえ現在においても、法華経を信じているようであっても、

【小権の見を出でず。】
権教や小乗経に執着してその知見から離れられないでいるのです。

【自見を以て正義と為〔す〕るが故に、】
自分の見解をもって正義とするゆえに、

【還〔かえ〕って法華経を以て或は小乗経に同じ、】
かえって法華経を小乗教や華厳や大日経と同じ教えに変えてしまい、

【或は華厳・大日経等に同じ、或は之を下す。】
あるいは法華経の教えをこれらの経よりも下に置くのです。

【此等の諸師は儒家・外道の賢聖〔けんせい〕より】
このような法華経の師は、儒家や外道の賢聖よりも

【劣〔おと〕れる者なり。】
劣る者であり、とても法華経の師とは呼べないのです。

【此等は且〔しばら〕く之を置く。】
これらの論議はしばらくこれをおいて、本題の十界互具を説明をしましょう。

【十界互具之〔これ〕を立つるは石中〔せきちゅう〕の火、】
十界互具を信じる事は、石の中で火が燃え、

【木中〔もくちゅう〕の花、信じ難〔がた〕けれども】
木の中に花が咲くように信じ難い事ではあっても、

【縁に値ひて出生すれば之を信ず。】
何かの縁によってこれが事実となって現われれば、人々はこれを信ずるのです。

【人界所具の仏界は水中の火、火中の水、】
人界に仏界が具わっている事は、水の中の火であり、火の中の水のようなもので、

【最も甚〔はなは〕だ信じ難し。然りと雖も竜火〔りゅうか〕は】
もっとも信じ難い事ではあるけれども、それでも、水素が燃えて水が出き、

【水より出で竜水は火より生ず、】
その水素が燃える時に大きな炎が生じるようなものなのです。

【心得られざれども現証有れば之を用ゆ。】
信じる事が出来なくても現実にそうなれば、信じるしかないのです。

【既に人界の八界之を信ず、】
すでに、あなたは、人界に地獄から菩薩までの八界がある事を信じたのであるから、

【仏界何ぞ之を用ひざらん。】
どうして経文に説かれているように仏界がある事を信じないのでしょうか。

【尭舜〔ぎょうしゅん〕等の聖人の如きは万民に於て偏頗〔へんぱ〕無し、】
中国古代の尭王や舜王は、万民に対して偏ることなく平等に善政を行った事実は、

【人界の仏界の一分なり。】
人界に仏界が具わっている現れであるのです。

【不軽菩薩は所見〔しょけん〕の人に於て仏身を見る、】
不軽菩薩は、見る人すべてに対して、仏身であると礼拝しているのです。

【悉逹太子〔しったたいし〕は】
またインドの悉達太子は、

【人界より仏身を成ず、】
人界に生まれながら、仏身を成就して釈迦牟尼仏となりました。

【此等の現証を以て之を信ずべきなり。】
これらの現証をもって人界に仏界を具えていることを信ずべきなのです。


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