日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


観心本尊抄 29 本門流通の文を引く


第28章 本門流通の文を引く

【神力品に云はく「爾の時に千世界微塵等の菩薩摩訶薩〔まかさつ〕、】
法華経神力品には「釈迦牟尼仏が滅後の弘通を付属するにあたって、

【地より涌出せる者、】
千世界微塵の無量無数の地涌の大菩薩たちは、

【皆仏前に於て一心に合掌し、尊顔〔そんげん〕を瞻仰〔せんごう〕して】
すべて仏の前において一心に合掌し、

【仏に白〔もう〕して言〔もう〕さく、】
仏の顔を仰いで申し上げるには、

【世尊、我等仏の滅後、世尊分身〔ふんじん〕所在〔しょざい〕の国土、】
世尊、私達は釈迦牟尼仏の滅後に、世尊の分身の国土、

【滅度の処に於て、当に広く此を説くべし」等】
また世尊の滅度した国土において、広く法華経を説き弘めます」と言ったと

【云云。天台の云はく「但〔ただ〕下方〔げほう〕の】
説かれています。天台大師は、これを解釈して「ただ下方から涌出した

【発誓〔ほっせい〕のみを見たり」等云云。】
地涌の大菩薩の誓願のみが認められたのを見た」と言い、

【道暹〔どうせん〕の云はく「付嘱とは此の経をば】
道暹〔どうせん〕は「付属する段になって、この法華経を、

【唯〔ただ〕下方涌出の菩薩に付す。】
ただ下方から涌出した菩薩にのみ付属した。

【何〔なに〕が故に爾〔しか〕る、法是久成の法なるに由〔よ〕るが故に】
なぜならば、妙法の五字は、すでに久遠実成の法であるから、

【久成の人〔にん〕に付す」等云云。】
久遠実成の人である地涌の菩薩に付属したのである」と言っています。

【夫〔それ〕文殊師利菩薩は東方金色〔こんじき〕世界の不動仏の弟子、】
文殊師利菩薩は、東方の金色世界にいる不動仏の弟子であり、

【観音は西方無量寿仏〔むりょうじゅぶつ〕の弟子、】
観音菩薩は、西方の世界にいる無量寿仏の弟子であり、

【薬王菩薩は日月浄明徳仏〔じょうみょうとくぶつ〕の弟子、】
薬王菩薩は、日月浄明徳仏の弟子であり、

【普賢菩薩は宝威〔ほうい〕仏の弟子なり。】
普賢菩薩は、宝威仏の弟子なのです。

【一往釈尊の行化〔ぎょうけ〕を扶〔たす〕けんが為〔ため〕に】
これらの諸菩薩は、釈迦牟尼仏の弘教を、一往、助ける為に

【娑婆世界に来入〔らいにゅう〕す。又爾前迹門の菩薩なり、】
この娑婆世界に来ているのです。また、爾前迹門で活躍する菩薩であって、

【本法所持の人に非〔あら〕ざれば】
三大秘法の御本尊を所持する人ではないので、

【末法の弘法〔ぐほう〕に足〔た〕らざる者か。】
末法に於いて法華経を弘教する能力がないのです。

【経に云はく「爾の時に世尊】
さらに法華経神力品には「その時に世尊は、

【乃至一切の衆の前に大神力〔だいじんりき〕を現〔げん〕じたまふ。】
すべての大衆の前で神通力を現じられた。

【広長舌〔こうちょうぜつ〕を出〔い〕だして】
その十の神通力の第一として、

【上梵世〔かみぼんせ〕に至らしめ、乃至十方世界衆〔もろもろ〕の】
仏法によって大予言を行い、それが現実となって証明され、十方の世界から集まった

【宝樹下〔ほうじゅげ〕の師子座上〔ししざじょう〕の諸仏も】
宝の木の下にある獅子の座にいる多くの仏も

【亦復〔またまた〕是〔か〕くの如く】
また同じように仏法によって大予言を行い、それが現実となって、

【広長舌を出だしたまふ」等云云。】
釈尊の説教が虚妄でない事を証明した」と説かれています。

【夫〔それ〕顕密二道・】
釈迦一代の説法の中で顕教にも密教にも、

【一切の大小乗経の中に、釈迦諸仏並び坐〔ざ〕し】
また、すべての大乗経、小乗経の中にあっても、このような事は、法華経以外には

【舌相〔ぜっそう〕梵天〔ぼんてん〕に至る文之〔これ〕無し。】
ありませんでした。

【阿弥陀経の広長舌相】
阿弥陀経には、六万の諸仏がそれぞれの国土で仏法の予言を

【三千を覆〔おお〕ふは有名無実〔うみょうむじつ〕なり。】
三千して証明したとありますが、これは他の国土の事であって有名無実なのです。

【般若経の舌相三千光〔ひかり〕を放ち般若を説きしも】
般若経において、仏法の予言が三千の光明を放ったと説いていますが、

【全く証明〔しょうみょう〕に非ず。】
これは権仏が証明したのであって、法華経とは、まったく比較になりません。

【此〔これ〕皆〔みな〕兼帯の故に】
これは、すべて権の教えを言っているのであって、

【久遠を覆相〔ふそう〕する故なり。】
仏の久遠の本地を覆いかくしているので意味がないのです。

【是くの如き十神力を現じて】
このようにして法華経神力品において十の神通力を現して、

【地涌の菩薩に妙法の五字を嘱累〔ぞくるい〕して云はく、】
地涌の菩薩に妙法の五字を託した事が説かれているのです。

【経に云はく「爾〔そ〕の時に仏、上行等の菩薩大衆に告げたまはく、】
要するに法華経神力品には「その時に仏は、上行菩薩などの大菩薩に、

【諸仏の神力は是〔か〕くの如く無量無辺不可思議なり。】
諸仏の神通力は、このように無量無辺であり不可思議である。

【若し我、是〔こ〕の神力を以て】
この神通力によって

【無量無辺百千万億阿僧祇劫〔あそうぎこう〕に於て、】
無量無辺百千万億阿僧祇劫において、

【嘱累の為の故に、此の経の功徳を説かんに】
妙法五字を託された故に、この法華経の功徳を説くとも、

【猶〔なお〕尽〔つ〕くすこと能〔あた〕はじ。】
なお説き尽くす事は出来ないのです。

【要を以て之を言はゞ、如来の一切の所有〔しょう〕の法、】
いまその肝要を取り上げて言うとすれば、

【如来の一切の自在〔じざい〕の神力、】
如来のすべての所有している法、如来のすべての自由自在の神通力、

【如来の一切の秘要〔ひよう〕の蔵〔ぞう〕、】
如来のすべての秘要の蔵、

【如来の一切の甚深〔じんじん〕の事、】
如来のすべての甚深の事、

【皆此の経に於て宣示顕説〔せんじけんぜつ〕す」等】
以上の四つの肝要をすべてこの法華経において説き顕したのです」と

【云云。天台の云はく「爾時仏告上行より下は】
説かれているのです。天台大師は「爾時仏告上行と言う文章より下は、

【第三結要付属なり」云云。】
第三結要付属である」と言われています。

【伝教の云はく「又神力品に云はく、以要言之、】
また伝教大師は、これを解釈して「神力品に以要言之、

【如来一切所有之法、乃至宣示顕説(已上経文)。】
如来一切所有之法、乃至宣示顕説(以上経文)と説かれている。

【明らかに知んぬ、果分〔かぶん〕の一切の所有の法、果分の一切の自在の神力、】
如来のすべての所有の法、すべての自由自在の神通力、

【果分の一切の秘要の蔵、果分の一切の甚深の事、】
すべての秘要の蔵、すべての甚深の事、

【皆法華に於て宣示顕説するなり」等云云。】
これらは、すべて法華において述べ示し、説き現したのである」と言われています。

【此の十神力は妙法蓮華経の五字を以て、】
このように十の神通力を現じて妙法蓮華経の五字をもって

【上行・安立行・浄行・無辺行等の四大菩薩に授与したまふなり。】
上行、安立行、浄行、無辺行の四大菩薩に授け与えたのです。

【前の五神力は在世の為、】
この前の五つの神通力は、在世の為であり、

【後の五神力は滅後の為なり。】
後の五つの神通力は、滅後の為に現じたのです。

【爾〔しか〕りと雖も再往之を論ずれば一向に滅後の為なり。】
しかし、実際には、すべて滅後の為なのです。

【故に次下〔つぎしも〕の文に云はく】
故にこの次の文には

【「仏滅度の後に能〔よ〕く是の経を持〔たも〕たんを以ての故に、】
「仏滅後にこの経をよく持〔たも〕つ事によって、

【諸仏皆歓喜して無量の神力を現じたまふ」等云云。】
諸仏はみな歓喜して無量の神通力を現じ給う」と説かれているのです。

【次下の嘱累品に云はく】
神力品の後に説かれた嘱累品には

【「爾の時に釈迦牟尼仏、法座より起〔た〕って大神力を現じたまふ。】
「その時に釈迦牟尼仏は法座より立って大神通力を現じ給う、

【右の手〔みて〕を以〔もっ〕て無量の菩薩摩訶薩の頂〔いただき〕を摩〔な〕で】
右の手を以て無量の菩薩摩訶薩の頭をなでられて、

【乃至今〔いま〕以て汝等〔なんだち〕に付嘱す」等云云。】
今、あなた達に法華経を付属する」と説かれています。

【地涌の菩薩を以て頭〔はじめ〕と為〔な〕して、】
この意味は、地涌の大菩薩を先頭にして

【迹化・他方乃至梵・釈・四天等に此の経を嘱累したまふ。】
迹化、他方の諸菩薩、及び、梵天、帝釈、四天などにこの法華経を託したのです。

【「十方より来〔き〕たれる諸〔もろもろ〕の分身〔ふんじん〕の仏、】
この総付嘱が終わると十方世界より集まって来ていた分身の諸仏は、

【各本土に還りたまふ。】
各々の本土へ帰られたのです。

【乃至多宝仏の塔還〔かえ〕って故〔もと〕の如くしたまふべし」等云云。】
また多宝仏の塔を閉じて元の通りに戻した」と説かれています。

【薬王品已下乃至涅槃経等は、地涌の菩薩去〔さ〕り了〔おわ〕って、】
次の薬王品以後から涅槃経までは、地涌の菩薩が本地へ帰ってしまった後で、

【迹化の衆・他方の菩薩等の為〔ため〕に重〔かさ〕ねて之を付嘱したまふ。】
迹化や他方の菩薩の為に重ねてこれを託されているのです。

【□拾遺嘱〔くんじゅういぞく〕是なり。】
「□拾遺嘱」と言うのがこれの事です。


ページのトップへ戻る