御書研鑚の集い 御書研鑽資料
観心本尊抄 7 十界互具の文
第6章 十界互具の文
【問うて曰く、】
それでは質問しますが、
【法華経は何〔いず〕れの文ぞ、】
十界互具、一念三千を説く法華経にはどのような文章があり、
【天台の釈は如何〔いかん〕。】
天台の文章にはどのような解釈がされているのでしょうか。
【答へて曰く、法華経第一方便品に云はく】
それに答えるとすると、法華経の第一方便品には
【「衆生をして仏知見を開かしめんと欲〔ほっ〕す」等云云。】
「衆生に仏知見を開かせようと思うが故に諸仏は世に出現する」と説かれています。
【是は九界所具の仏界なり。】
これは、総じて九界の衆生に仏界を具えていることを顕わすのです。
【寿量品に云はく「是くの如く我成仏してより】
同じく寿量品に「このように自分が成仏してより、
【已来〔このかた〕甚〔はなは〕だ大〔おお〕いに久遠なり、】
このかたはなはだ大いに久遠であり、
【寿命、無量阿僧祇劫、常住にして滅せず、】
その寿命は永遠とも言え常住不滅なのです。
【諸の善男子、我本〔もと〕菩薩の道を行じて成ぜし所の寿命】
諸君、私がもとより菩薩の修行を行って成就した所の寿命は、
【今猶〔なお〕未だ尽〔つ〕きず、復〔また〕上〔かみ〕の数に倍せり」等云云。】
今なお未だ尽きず、その数に倍するのである」と説かれているのは、
【此の経文は仏界所具の九界なり。】
仏界に九界が具〔そな〕わっているという文章なのです。
【経に云はく「提婆逹多〔だいばだった〕、】
同じく提婆達多品に「提婆達多は天王如来となる」とあり、
【乃至天王如来〔てんのうにょらい〕」等云云。地獄界所具の仏界なり。】
これは、地獄界に仏界が具わっているという意味なのです。
【経に云はく「一を藍婆〔らんば〕と名づけ、】
同じく陀羅尼品に「十羅刹女の第一は藍婆であり、
【乃至汝等〔なんだち〕但〔ただ〕能〔よ〕く法華の名〔みな〕を護持する者は】
十羅刹が法華経の行者を護ると誓った
【福量〔はか〕るべからず」等云云。】
その福徳は無量である」と説かれていますが、
【是〔これ〕餓鬼界所具の十界なり。】
餓鬼界に十界が具わっているという意味なのです。
【経に云はく「竜女、乃至成等正覚」等云云。】
同じく提婆達多品には「竜女が等正覚を成ず」とあり、畜生である
【此〔これ〕畜生界所具の十界なり。】
竜女が成仏すると云うのは、畜生界に十界が具わっているという文章なのです。
【経に云はく「婆稚阿修羅王〔ばじあしゅらおう〕、】
同じく法師品には「婆稚阿修羅王が、
【乃至一偈一句を聞いて、】
此の経の一偈一句を聞いて随喜の心を起こすならば、
【阿耨多羅三藐三菩提〔あのくたらさんみゃくさんぼだい〕を得べし」等云云。】
阿耨多羅三藐三菩提〔あのくたらさんみゃくさんぼだい〕を得る」とあり、
【修羅界所具の十界なり。】
これは修羅界に十界が具わるという文章です。
【経に云はく「若し人仏〔ほとけ〕の為の故に、】
同じく方便品に「もし、人々が仏を供養する為に仏像を建立するならば、
【乃至皆已〔すで〕に仏道を成ず」等云云。】
この人は必ず仏道を成就するであろう」と説かれています。
【此〔これ〕人界所具の十界なり。】
これは人界に十界が具わるという文章なのです。
【経に云はく「大梵天王、乃至我等も亦是くの如く、】
同じく譬喩品に「大梵天王などは、
【必ず当〔まさ〕に作仏〔さぶつ〕することを得〔う〕べし」等云云。】
必ず作仏するであろう」とあり、
【此天界所具の十界なり。】
これは天界に十界が具わるという文章なのです。
【経に云はく「舎利弗、乃至華光〔けこう〕如来」等云云。】
同じく譬喩品に「舎利弗は華光如来となる」とあり、
【此声聞界所具の十界なり。】
これは声聞界に十界が具わるという文章なのです。
【経に云はく「其の縁覚〔えんがく〕を求むる者・】
同じく方便品に「縁覚を求める僧や
【比丘・比丘尼、乃至合掌し敬心〔きょうしん〕を以て】
尼僧が合掌し敬う心で
【具足の道を聞かんと欲す」等云云。此即ち縁覚界所具の】
具足の道を聞こうと思った」とあり、具足の道とは、一念三千の法門であって、
【十界なり。】
これは縁覚界に十界が具わるという文章なのです。
【経に云はく「地涌千界、】
同じく神力品に「地涌の菩薩は、この真浄の大法を得ようと思った」とあり、
【乃至真浄大法〔しんじょうだいほう〕」等云云。】
真浄大法とは事の一念三千の南無妙法蓮華経の事であって、
【此即ち菩薩界所具の十界なり。】
ようするに、これは、菩薩界に十界が具わるという文章なのです。
【経に云はく「或説己身〔わくせっこしん〕】
同じく寿量品には「或は己身を説き或は他身を説き、或いは己心を示し
【或説他身〔わくせったしん〕」等云云。】
或は他身を示し、或いは己事を示し或いは他事を示す」等と説いているのは
【即ち仏界所具の十界なり。】
ようするに仏界に十界が具わるという文章なのです。