日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


報恩抄 3 報恩の要術を明かす


第2章 報恩の要術を明かす

【此の大恩をほうぜんには必ず仏法をならひきわめ、】
このように大切な恩を報ずる為には、必ず仏法を習い極め、

【智者とならで叶ふべきか。】
智者とならなければならないのです。

【譬へば衆盲をみちびかんには生盲の身にては】
例えば、目が見えない多くの衆生を導く為には、自らが目が見えないで、

【橋河〔きょうが〕をわた〔渡〕しがたし。】
どうやって、みんなを無事、橋を渡らせて彼岸に送る事が出来るでしょうか。

【方風を弁〔わきま〕へざらん大舟〔おおふね〕は、】
風向きが、わからないのに、どうやって多くの人々を船に乗せて

【諸商を導きて宝山にいたるべしや。】
目的地である宝の山に送る事が出来るでしょうか。

【仏法を習ひ極めんとをも〔思〕わば、いとまあらずば叶ふべからず。】
このように仏法を習い極めようとしなければ恩を報ずる事は出来ないのです。

【いとまあらんとをもわば、】
仏法を習い極めようと努力しないで、

【父母・師匠・国主等に随ひては叶ふべからず。】
ただ父母や師匠、国主に従っていては報恩は出来ないのです。

【是非につけて出離〔しゅつり〕の道をわきまへざらんほどは、】
とにかく報恩の為には、仏法を習い極めて生死を離れなければならず、

【父母・師匠等の心に随ふべからず。】
父母や師匠の心に付き従っていては、ならないのです。

【この義は諸人をも〔思〕わく、顕〔けん〕にもはづれ】
このように言うと人々は、報恩からは大きく外〔はず〕れ、

【冥〔みょう〕にも叶ふまじとをもう。】
その心も決して正しいとは言えないと思う事でしょう。

【しかれども、外典の孝経にも父母・主君に随わずして、】
しかし、世間の書物にも、父母や主君に従わずに

【忠臣・孝人なるやうもみえたり。】
忠臣であったり、孝行の人であったりする例は幾らもあるのです。

【内典の仏経に云はく「恩を棄〔す〕て無為〔むい〕に入るは】
仏教の経典では「世間の報恩を捨てて仏法を行う事が

【真実報恩の者なり」等云云。】
真実の報恩である」と説かれています。

【比干〔ひかん〕が王に】
殷〔いん〕の紂王〔ちゅうおう〕の部下の比干が

【随はずして賢人のな〔名〕をとり、】
主人の暴虐〔ぼうぎゃく〕な命令に従わずに賢人と呼ばれたのはこの例であり、

【悉達太子〔しったたいし〕の浄飯〔じょうぼん〕大王に背きて】
後の釈迦牟尼仏である悉達太子が親の浄飯大王に背いて出家し、

【三界第一の孝となりしこれなり。】
法華経を説いたのは、この世の中で最大の親孝行であるのです。


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