日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


報恩抄 22 災難の所以を明かす


第21章 災難の所以を明かす

【弘法・慈覚・智証の誤り、並びに禅宗と念仏宗との】
弘法、慈覚、智証の誤〔あやま〕りと禅宗と念仏宗の

【わざわ〔禍〕いあい〔相〕を〔起〕こりて、】
災いが競って起こり、

【逆風に大波をこり、大地震のかさなれるがごとし。】
暴風で大波が起こり、その上、大地震が重なったのです。

【さればやうや〔漸〕く国をと〔衰〕ろう。】
そう云う事で、いよいよ国は、衰えてしまったのです。

【太政〔だいじょう〕入道が国をを〔押〕さへ、】
以前は、平清盛が太政大臣となって国政を我がものとし、

【承久〔じょうきゅう〕に王位つきはてゝ】
承久の乱では、北条義時が王位を乗っ取り、

【世〔よ〕東にうつりしかども、但国中のみだれにて】
政治の中心は東の鎌倉に移って、このように国中が内戦で乱れたけれども、

【他国のせめはなかりき。】
それでも他国が攻めて来るような事はなかったのです。

【彼は謗法の者は国に充満せりといへども、】
弘法のような謗法の者が国に充満していたけれども、

【さゝ〔支〕へ顕はす智人なし。かるがゆへになの〔斜〕めなりき。】
それでも正法を顕わす智者もいなかったので、逆にその罪は、軽かったのです。

【譬へば師子のねぶ〔眠〕れるは手をつけざればほ〔吼〕へず。】
眠れるライオンに手を出さなければ、吠えられる事などないのです。

【迅〔はや〕き流れは櫓〔ろ〕をさゝへざれば波たかゝらず。】
流れが速い川に櫓を入れさえしなければ、波は立たないのです。

【盗人はとめざればいからず。】
盗人であっても逆らわなければ、怒る事もなく、

【火は薪〔たきぎ〕を加へざればさかんならず。】
新しく木を入れなければ、火も勢いを増す事はないのです。

【謗法はあれどもあらわす人なければ国も】
いくら謗法であっても、それを指摘する者がいないのであれば、

【をだ〔穏〕やかなるにに〔似〕たり。】
しばらくは、国も穏やかなままに見えるものです。

【例せば日本国に仏法わたりはじめて候ひしに、】
たとえば日本に仏法が渡り始めて、

【始めはなに事もなかりしかども、】
始めは何事もなかったけれども、蘇我〔そが〕の馬子が仏法を信じると、

【守屋〔もりや〕仏をやき、】
物部〔もののべ〕の守屋が仏像を焼き、

【僧をいましめ、堂塔をやきしかば、天より火の雨ふり、】
僧侶を捕え、堂塔を焼き尽くすと、空から火の雨が降り、

【国にはうさう〔疱瘡〕をこり、兵乱つゞきしがごとし。】
国中で疱瘡が流行し、兵乱が続出したのと同じなのです。

【此はそれにはにるべくもなし。謗法の人々も国に充満せり。】
しかし、これは、それ以上であり、謗法の人々は、国に充満しており、

【日蓮が大義も強くせめかゝる。】
日蓮が仏法の大義によって、謗法の者を強く責めているからなのです。

【修羅と帝釈と、仏と魔王との合戦にもをと〔劣〕るべからず。】
その姿は、修羅と帝釈と、仏と魔王との戦いにも劣らず、

【金光明経に云はく「時に隣国の怨敵是〔か〕くの如き念を興〔おこ〕さん。】
金光明経には「その時、隣りの国の怨敵がすぐに総兵力をもって、

【当〔まさ〕に四兵を具して彼の国土を壊〔やぶ〕るべし」等云云。】
この国土に侵攻しようとの思いを興すのである」と説かれています。

【又云はく「時に王見已〔お〕はって、】
また「その時、王は、その結末を見て、

【即ち四兵を厳〔よそお〕ひて彼の国に発向〔はっこう〕し、】
即座に総兵力を動員して、この国に向かって出発し、

【討罰を為〔な〕さんと欲す。我等爾〔そ〕の時に、当に眷属〔けんぞく〕】
謗法の者を討ち、罰を与えるのである。その時には、数多くの諸天善神も、

【無量無辺の薬叉〔やしゃ〕諸神と】
夜叉など、いろいろな形となって、

【各〔おのおの〕形を隠〔かく〕して為に護助を作〔な〕し、】
その身を隠し、この王を援護するのである。

【彼の怨敵をして自然に降伏〔ごうぶく〕せしむべし」等云云。】
こうやって仏法の怨敵を自動的に降伏させてしまうのである」と説かれており、

【最勝王経の文、又かくのごとし。大集経云云。仁王経云云。】
最勝王経、大集経、仁王経にも、これと同じ事が説かれています。

【此等の経文のごときんば、正法を行ずるものを国主あだみ、】
これらの経文の通りであれば、正法を行ずる者を国主が恨んで、

【邪法を行ずる者のかたうど〔方人〕せば、】
邪法を行ずる者の味方をすれば、

【大梵天王・帝釈・日月・四天等・隣国の賢王の身に入りかわりて】
大梵天王、帝釈天、日月、四天等が隣りの国の賢王の身になって、

【其の国をせむべしとみゆ。】
その国を攻めると思われるのです。

【例せば訖利多王〔きりたおう〕を雪山下王〔せっせんげおう〕のせめ、】
たとえば、カシミラ国の訖利多王がトカラ国の雪山下王に攻められ、

【大族王〔だいぞくおう〕を幻日王〔げんにちおう〕の失ひしがごとし。】
ケッカ国の大族王がマカダ国の幻日王によって滅ぼされたのと同じ事なのです。

【訖利多王と大族王とは月氏の仏法を失ひし王ぞかし。】
訖利多王と大族王は、いずれもインドにおいて仏法を破壊した者なのです。

【漢土にも仏法をほろぼしゝ王、みな賢王にせめられぬ。】
漢土においても仏法を滅ぼした王は、すべて賢王に攻められているのです。

【これは彼にはにるべくもなし。仏法のかたうどなるやうにて、】
しかし、この日本の状況は、さらにひどく、為政者が仏法を興隆させようとして

【仏法を失ふ法師のかたうどをするゆへに、愚者はすべてしらず。】
仏法を破壊する僧侶を助けている事が、なかなか理解できないのです。

【智者なんども常の智人はし〔知〕りがた〔難〕し。】
愚かな者だけでなく智者であっても普通の智人では、この事は、知り難く、

【天も下劣の天人は知らずもやあるらん。】
たとえ諸天善神であっても智慧がない神には、わからないのかも知れません。

【されば漢土・月氏のいにし〔古〕へのみだれよりも】
そうであれば、過去の中国やインドよりも、

【大きなるべし。】
日本の現在の状態は悪く、兵乱は、さらに大きく悲惨なのでしょう。


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