御書研鑚の集い 御書研鑽資料
報恩抄 37 本門三大秘法
第36章 本門三大秘法
【問うて云はく、天台伝教の弘通し給はざる】
それでは、天台大師や伝教大師が未だに弘めていない
【正法ありや。答ふ、有り。】
正しい仏法と言うのはあるのでしょうか。それは、有ります。
【求めて云はく、何物ぞや。答へて云はく、三つあり、】
それは、どのようなものでしょうか。それは、三つあります。
【末法のために仏留め置き給ふ。】
末法の衆生の為に釈迦牟尼仏が留め置かれているのです。
【迦葉・阿難等、馬鳴・竜樹等、】
迦葉尊者、阿難尊者など、また馬鳴菩薩、竜樹菩薩など、
【天台・伝教等の弘通せさせ給はざる正法なり。】
また天台大師、伝教大師などが未だに弘められなかった正しい仏法です。
【求めて云はく、其の形貌〔ぎょうみょう〕如何〔いかん〕。】
それは、どのような形であり、どのような姿なのでしょうか。
【答へて云はく、一つには日本乃至一閻浮提〔えんぶだい〕一同に】
それは、一つには、日本および全世界の末法の衆生一同に与えられた
【本門の教主釈尊を本尊とすべし。】
本門の教主である釈尊が本尊とした南無妙法蓮華経です。
【所謂〔いわゆる〕宝塔の内の釈迦・多宝、】
それは、宝塔の中の釈迦牟尼仏、多宝如来、
【外〔そのほか〕の諸仏並びに上行等の四菩薩脇士〔きょうじ〕となるべし。】
その他の諸仏、そして上行菩薩などの四菩薩を脇士とする本尊なのです。
【二つには本門の戒壇。】
二つには、本門の戒壇です。
【三つには日本乃至漢土月氏一閻浮提に人ごとに有智無智をきらはず】
三つには、日本および中国、インド、そして全世界の人々が有智無智をかかわらず、
【一同に他事をすてゝ南無妙法蓮華経と唱ふべし。】
一同に他事を捨てて南無妙法蓮華経と唱える題目であるのです。
【此の事いまだひろまらず。】
この事は、未だに弘まっていないのです。
【一閻浮提の内に仏滅後二千二百二十五年が間一人も唱えず。】
全世界の中で仏滅後二千二百二十五年の間に一人も唱えていない題目なのです。
【日蓮一人南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経等と声もを〔惜〕しまず唱ふるなり。】
日蓮一人が南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経と声も惜しまずに唱えているのです。
【例せば風に随って波の大小あり、】
たとえば、風の強さによって波の大小があり、
【薪〔たきぎ〕によ〔依〕て火の高下あり、池に随って蓮〔はちす〕の大小あり、】
薪の質によって火の高下があり、池の深さによって蓮の大小があるように、
【雨の大小は竜による、根ふかければ枝しげし、】
雨の大小は、雲により、根が深ければ枝がよく育ち、
【源〔みなもと〕遠ければ流れながしというこれなり。】
源流が遠ければ川の流れは、長くなるようなものなのです。
【周の代の七百年は文王〔ぶんおう〕の礼孝による。】
周の時代が七百年も続いたのは、文王の礼儀と孝行によるのです。
【秦〔しん〕の世ほど〔程〕もなし、始皇の左道なり。】
秦の時代が短かったのは、始皇の暴政のせいなのです。
【日蓮が慈悲曠大〔こうだい〕ならば】
そのように日蓮の慈悲が広大であるならば、
【南無妙法蓮華経は万年の外〔ほか〕未来までもながる〔流布〕べし。】
南無妙法蓮華経は、万年を過ぎても、さらに未来までも流れ続けるのです。
【日本国の一切衆生の盲目をひらける功徳あり。無間地獄の道をふさぎぬ。】
日本のすべての衆生の盲目を開く功徳があり、無間地獄の道を塞ぐのです。
【此の功徳は伝教・天台にも超へ、】
この功徳は、伝教大師や天台大師にも超え、
【竜樹・迦葉にもすぐれたり。】
竜樹菩薩や迦葉尊者にも優れているのです。
【極楽百年の修行は穢土〔えど〕の一日の功に及ばず。】
極楽百年の修行は、穢土の一日の修行にも及ばず、
【正像二千年の弘通は末法の一時に劣るか。】
正像二千年の弘通は、末法の一時の弘通にも劣るのです。
【是はひとへに日蓮が智のかしこきにはあらず、】
これは、偏に日蓮の智慧の優れているから言っているのではなく、
【時のしからしむるのみ。】
弘めるべき時が来たから言うのです。
【春は花さき秋は菓〔このみ〕なる、夏はあたゝかに冬はつめたし。】
春は、花が咲き、秋は、果実がなり、夏は、暖かであり、冬は、冷たいのです。
【時のしからしむるに有らずや。】
このように、すべては時によるのです。
【「我が滅度の後〔のち〕、後の五百歳の中に広宣流布して】
法華経薬王品に「我が滅度の後、後の五百歳の中において、広宣流布して
【閻浮提に於て断絶して悪魔・魔民〔まみん〕・諸天・竜・夜叉〔やしゃ〕、】
閻浮提において断絶して、悪魔、魔民、諸天、竜、夜叉、
【鳩槃荼〔くはんだ〕等をして】
鬼人などをして、
【其の便〔たよ〕りを得せしむること無けん」等云云。】
その便りを得せしむること無けん」と予言しているのです。
【此の経文若しむな〔空〕しくなるならば】
この経文の予言が空虚な嘘であるならば、
【舎利弗〔しゃりほつ〕は華光如来〔けこうにょらい〕とならじ、】
舎利弗は、華光如来とは成れず、
【迦葉〔かしょう〕尊者〔そんじゃ〕は】
迦葉尊者は、
【光明如来〔こうみょうにょらい〕とならじ、目□〔もっけん〕は】
光明如来とは成れず、目□〔もっけん〕尊者は、
【多摩羅跋栴檀香仏〔たまらばつせんだんこうぶつ〕とならじ、】
多摩羅跋栴檀香仏とは成れず、
【阿難は山海慧自在通王仏〔せんかいえじざいつうおうぶつ〕とならじ、】
阿難尊者は、山海慧自在通王仏とならず、
【摩訶波闍波提比丘尼〔まかはじゃはだいびくに〕は】
摩訶波闍波提比丘尼は、
【一切衆生喜見仏〔いっさいしゅじょうきけんぶつ〕とならじ、】
一切衆生喜見仏〔いっさいしゅじょうきけんぶつ〕とならじ
【耶輸陀羅〔やしゅだら〕は】
耶輸陀羅は、
【具足千万光相仏〔ぐそくせんまんこうそうぶつ〕とならじ。】
具足千万光相仏と成れないのです。
【三千塵点も戯論〔けろん〕、五百塵点も妄語〔もうご〕となりて、】
三千塵点の話しも戯論となり、五百塵点の話しも妄語となって、
【恐〔おそ〕らくは教主釈尊は無間地獄に堕〔お〕ち、】
恐らくは、教主釈尊は、無間地獄に堕ち、
【多宝仏は阿鼻〔あび〕の炎〔ほのお〕にむせび、】
多宝仏は、阿鼻地獄の炎にむせび、
【十方の諸仏は八大地獄を栖〔すみか〕とし、】
十方の諸仏は、八大地獄を住処とし、
【一切の菩薩は一百三十六の苦しみをうくべし。】
すべての菩薩は、地獄内の一百三十六の苦しみのすべてを受ける事でしょう。
【いかでかその義あるべき。】
どうしてそのような事があるでしょうか。
【其の義なくば日本国は一同の南無妙法蓮華経なり。】
そうでなければ、日本国は、一同に南無妙法蓮華経と唱えるようになるのです。