日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


報恩抄 35 馬鳴・竜樹の大乗弘通


第34章 馬鳴・竜樹の大乗弘通

【問うて云はく、此の法実にいみじくば、】
それでは、質問しますが、この南無妙法蓮華経がそれほど優れているのであれば、

【など迦葉〔かしょう〕・阿難・馬鳴〔めみょう〕・竜樹・無著〔むじゃく〕・】
なぜ迦葉尊者、阿難尊者、馬鳴菩薩、竜樹菩薩、無著菩薩、

【天親・南岳・天台・妙楽・伝教等は、】
天親菩薩、南岳大師、天台大師、妙楽大師、伝教大師などは、

【善導が南無阿弥陀仏とすゝ〔勧〕めて漢土に弘通せしがごとく、】
善導が南無阿弥陀仏を勧めて中国で弘めたように

【慧心・永観〔ようかん〕・法然が日本国を皆阿弥陀仏になしたるがごとく、】
また慧心、永観、法然が日本をすべて南無阿弥陀仏としたように、

【すゝめ給はざりけるやらん。】
なぜ南無妙法蓮華経を勧めなかったのでしょうか。

【答へて云はく、此の難は古〔いにしえ〕の難なり、】
それに答えると、この難問は、昔からの難問であり、

【今はじめたるにはあらず。馬鳴・竜樹菩薩等は】
今に始まった事ではありません。馬鳴菩薩、竜樹菩薩などは、

【仏滅後六百年七百年等の大論師なり。】
仏滅後六百年から七百年頃にかけて出現した大論師です。

【此の人々世にいでゝ大乗経を弘通せしかば、】
これらの馬鳴菩薩、竜樹菩薩が世に出現して大乗教を弘通したので、

【諸々の小乗の者疑って云はく、】
多くの小乗教の者は、疑って、このように言ったのです。

【迦葉・阿難等は仏の滅後二十年四十年住寿し給ひて】
迦葉尊者や阿難尊者などは、仏の滅後二十年から四十年に、

【正法をひろめ給ひしは、如来一代の肝心をこそ弘通し給ひしか。】
この世に出現して釈迦牟尼仏一代の肝心である正法を弘通されたのです。

【而るに此の人々は但苦・空・無常・無我の法門をこそ】
しかしながら、迦葉尊者や阿難尊者は、ただ苦、空、無常、無我の小乗経こそ

【詮とし給ひしに、】
優れていると言ったのに対して、

【今馬鳴・竜樹等は】
今、馬鳴菩薩や竜樹菩薩は、常楽我浄の大乗経こそ正しいと言ったのです。

【かしこしといふとも】
この馬鳴菩薩や竜樹菩薩が、いくら賢いと言っても、

【迦葉・阿難等にはすぐべからず是一。】
迦葉尊者や阿難尊者などには敵わないのです。

【迦葉は仏にあ〔値〕ひまい〔参〕らせて解〔さと〕りをえたる人なり。】
迦葉尊者は、釈迦牟尼仏に会って仏法を理解した人なのです。

【此の人々は仏にあひたてまつらず是二。】
この馬鳴菩薩や竜樹菩薩は、釈迦牟尼仏には会っていないのです。

【外道は常〔じょう〕・楽〔らく〕・我〔が〕・浄〔じょう〕と立てしを、】
外道がこの世を、常楽我浄であると人々に言ったのに対し、

【仏世に出でさせ給ひて】
釈迦牟尼仏は、世に出現して、

【苦・空・無常・無我と説かせ給ひき。】
この世は、苦、空、無常、無我であると説かれたのです。

【此のものどもは常・楽・我・浄といへり是三。】
この人たちは、外道と同じく、この世は、常楽我浄と言ったのです。

【されば仏も御入滅なりぬ。又迦葉等もかくれさせ給ひぬれば】
つまりは、釈迦牟尼仏が入滅して、また、迦葉尊者も亡くなってしまったので、

【第六天の魔王が此のものどもが身に入りかはりて】
第六天の魔王がこの人々の身に入って

【仏法をやぶり外道の法となさんとするなり。】
仏法を破り外道と同じようにしようとしたのでしょうか。

【されば仏法のあだ〔仇〕をば頭〔こうべ〕をわれ、】
そうであれば仏法の敵であり、頭を割り、

【頸〔くび〕をきれ、命をた〔断〕て、食を止めよ、国を追へと】
首を斬り、命を絶って、食を奪い、国から追放すべきであると

【諸の小乗の人々申せしかども、】
多くの小乗教を信じる人々が言ったけれども、

【馬鳴・竜樹等は但一・二人なり。】
それでも、馬鳴菩薩、竜樹菩薩は、ただ二人だけで大乗経を信じたのです。

【昼夜に悪口の声をきゝ】
毎日、人々の悪口を聞き、

【朝暮〔ちょうぼ〕に杖木〔じょうもく〕をかうぶ〔被〕りしなり。】
一日中、杖や木で叩かれ続けたのです。

【而れども此の二人は仏の御使ひぞかし。】
しかし、この二人は、まさしく仏の使いであったのです。

【正〔まさ〕しく摩耶〔まや〕経には六百年に馬鳴出で、】
摩耶経には、六百年に馬鳴菩薩が出現し、

【七百年に竜樹出でんと説かれて候。】
七百年に竜樹菩薩が出現すると説かれており、

【其の上、楞伽〔りょうが〕経等にも記せられたり。】
その上、楞伽経などにも書かれており、

【又付法蔵〔ふほうぞう〕経には申すにをよ〔及〕ばず。】
また、付法蔵経にも、それが書かれているのです。

【されども諸の小乗のものどもは用ひず】
しかし、多くの小乗教を信じる人々は、この仏の経文を信じる事はせず、

【但理不尽にせめしなり。】
ただ、理不尽にも大乗教を攻め立てたのです。

【「如来現在猶多〔ゆた〕怨嫉〔おんしつ〕況滅度後〔きょうめつどご〕」の】
「如来現在、猶多怨嫉、況滅度後」という

【経文は此の時にあたりて少しつみしられけり。】
法華経法師品の経文は、この時にあたって、少し現実となって現れたのです。

【提婆〔だいば〕菩薩の外道にころされ、】
提婆菩薩が外道に殺され、

【師子尊者〔ししそんじゃ〕の頸〔くび〕をきられし】
師子尊者が首を斬られたのも、

【此の事をもっておもひやらせ給へ。】
この事の現れなのです。


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