御書研鑚の集い 御書研鑽資料
報恩抄 21 国家諌暁
第20章 国家諌暁
【日本国は慈覚・智証・弘法の流れなり、】
このように日本国は、慈覚、智証、弘法の流派となり、
【一人として謗法ならざる人はなし。】
一人として謗法でない者はいなくなったのです。
【但し事の心を案ずるに、】
このような日本の人々の法華誹謗の心を心配してみると、
【大荘厳〔しょうごん〕仏の末、一切明王仏の末法のごとし。】
その姿は、過去世の大荘厳仏の末法、一切明王仏の末法と同じような有様なのです。
【威音王仏〔いおんのうぶつ〕の末法には】
威音王仏の末法には、法華誹謗の者達は、
【改悔〔かいげ〕ありしすら猶〔なお〕】
後悔し懺悔〔ざんげ〕したにも関わらず、
【千劫阿鼻地獄に堕〔お〕つ。】
千劫と云う長い間、無間地獄に堕ちたのです。
【いかにいわ〔況〕うや、日本国の真言師・禅宗・】
まして、日本の真言師、禅宗、
【念仏者等は一分の廻心〔えしん〕なし。】
念仏者などは、まったく反省などしていないのです。
【「如是展転〔てんでん〕、至無数劫〔しむしゅこう〕」疑ひなきものか。】
法華経にあるように、無数劫と云う長い間、地獄にいる事は、まったく疑いがなく、
【かゝる謗法の国なれば天もすてぬ。】
このような謗法の国であれば、諸天も見捨ててしまうのです。
【天すつればふるき守護の善神もほこら〔祠〕をや〔焼〕ひて】
このように諸天が捨ててしまえば、守護の善神もその住処〔すみか〕を焼き払って、
【寂光の都へかへり給ひぬ。】
寂光の都へ帰ってしまうのです。
【但日蓮計り留まり居て告げ示せば、国主これをあだ〔怨〕み】
ただ日蓮だけがここに留まって、それを教えると、国主は、これに怒り、
【数百人の民に或は罵詈〔めり〕、或は悪口〔あっく〕、】
数百人の民衆が罵倒し悪口を言うのです。
【或は杖木〔じょうもく〕、或は刀剣、】
そして、杖木で叩き刀剣で斬りつけ、
【或は宅々ごとにせ〔塞〕き、或は家々ごとにを〔追〕う。】
家々ごとに門を閉じ、または、追い払ったのです。
【それにかなはねば】
それでも云うのを止めないと法華誹謗の者達は、
【我と手をくだして二度まで流罪あり。】
自ら手を下して日蓮を二度も流罪にし、
【去ぬる文永八年九月の十二日には頸〔くび〕を切らんとす。】
去る文永8年9月12日には、首を討とうとしたのです。
【最勝王経に云はく「悪人を愛敬〔あいぎょう〕し】
金光明最勝王経には「法華誹謗の悪人を褒めて、
【善人を治罰〔じばつ〕するに由るが故に、他方の怨賊〔おんぞく〕来たって】
法華経を持〔たも〕つ善人を罰する故に他国の野蛮な者達が攻めて来て、
【国人喪乱〔そうらん〕に遭〔あ〕ふ」等云云。大集経に云はく】
国の人々は、騒乱に遭うのである」と説かれています。大集経には
【「若しは復諸〔もろもろ〕の刹利〔せつり〕国王諸の非法を作〔な〕し、】
「もし、バラモン教の武士階級の国王が
【世尊の声聞の弟子を悩乱し、】
不条理にも釈迦牟尼仏の弟子である声聞を迫害し、
【若しは以て毀罵〔きめ〕し、刀杖もって打斫〔ちょうしゃく〕し、】
あるいは、ののしり、刀や杖〔つえ〕もって打ちすえ、
【及び衣鉢〔えはつ〕種々の資具〔しぐ〕を奪ひ、】
持ち物を奪い取り、
【若しは他の給施に留難〔るなん〕を作す者有らば、】
あるいは、布施をする人々に言いがかりをつける者がいれば、
【我等彼をして自然〔じねん〕に卒〔にわ〕かに他方の怨敵を起こさしめん。】
諸天は、自動的に他国の野蛮な者達に、その国を攻めさせるのである。
【及び自界の国土にも亦〔また〕兵起こり、病疫飢饉〔ききん〕し、】
さらに自国の中でも反乱が起こり、病疫や飢饉が蔓延〔まんえん〕し、
【非時に風雨し闘諍〔とうじょう〕言訟〔ごんしょう〕せしめん。】
急な風雨にさらされ、諍〔いさか〕いや訴訟〔そしょう〕が続く。
【又其の王をして久〔ひさ〕しからずして】
そのバラモン教を信じる王は、久しからずして、
【復当〔まさ〕に已〔おの〕が国を亡失せしむべし」等云云。】
自分の国を滅亡させてしまう」と説かれているのです。
【此等の文のごときは日蓮この国になくば仏は大妄語の人、】
これらの文章は、日蓮がこの国にいないならば、釈迦牟尼仏は、大嘘つきであり、
【阿鼻地獄はいかで脱〔のが〕れ給ふべき。】
無間地獄をどうして免〔まぬが〕れる事が出来るでしょうか。
【去ぬる文永八年九月十二日に、平左衛門並びに】
去る文永8年9月12日に平左衛門とその家来、
【数百人に向かって云はく、日蓮は日本国のはしら〔柱〕なり。】
数百人の者に向かって、日蓮は、日本国の柱である。
【日蓮を失ふほどならば、日本国のはしら〔柱〕をたを〔倒〕すになりぬ等云云。】
日蓮を失うならば、日本国の柱を倒すのと同じなのであると告げたのです。
【此の経文に智人を国主等、若しは悪僧等がざんげん〔讒言〕により、】
この経文には、法華経を受持する智者に対して国主が悪僧の讒言を信じたり、
【若しは諸人の悪口によ〔依〕て失〔とが〕にあ〔当〕つるならば、】
人々の悪口を依りどころにして、罪を被せて、迫害するならば、
【には〔俄〕かにいくさ〔軍〕を〔起〕こり、又大風ふかせ、】
たちまち、戦争が起こり、また、大風が吹きよせ、
【他国よりせむべし等云云。】
あるいは、他国から攻められると説かれています。
【去ぬる文永九年二月のどし〔同士〕いくさ、】
去る文永9年2月の北条時宗と時輔の内乱、
【同じき十一年の四月の大風、同じき十月に大蒙古の来たりしは、】
同じく11年の4月の大風、同じく10月の蒙古の来襲は、
【偏〔ひとえ〕に日蓮がゆへにあらずや。】
日蓮を迫害した事によるのです。
【いわ〔況〕うや前よりこれをかんが〔勘〕へたり。】
これらは、前々から、世間に対して公言していた事であり、
【誰の人か疑ふべき。】
誰がこれを疑うのでしょうか。