日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


報恩抄 7 法華最第一を明かす


第6章 法華最第一を明かす

【或人〔あるひと〕疑って云はく、漢土日本にわたりたる経々にこそ】
ある人は、この事に疑いを持ち、中国や日本に渡って来た経文には、

【法華経に勝れたる経はをは〔在〕せずとも、】
法華経より優れた経文はなくても、

【月氏・竜宮・四王・日月・□利天〔とうりてん〕・】
インドや竜王、四天王、日月、帝釈天、

【兜率天〔とそつてん〕なんどには】
兜率天などの世界には、

【恒河沙〔ごうがしゃ〕の経々ましますなれば、】
川の砂のように多くの経典があり、

【其の中に法華経に勝れさせ給ふ御経やましますらん。】
その中には、法華経よりも優れた経文があるのではと言うのです。

【答へて云はく、一をもって万を察せよ。】
それに答えるならば、一をもって、すべてを察するべきでしょう。

【庭戸〔ていこ〕を出でずして天下をしるとはこれなり。】
賢い者は、家を出なくても天下の事が理解出来るとは、この事なのです。

【癡人が疑って云はく、我等は南天を見て東西北の三空を見ず。】
愚か者が南の空に太陽があるのを見て、他の三方向を見ていないので、

【彼の三方の空に此の日輪より外の別の日やましますらん。】
そこにも太陽があるかも知れないと思うのと同じようなものなのです。

【山を隔〔へだ〕て煙の立つを見て、】
愚か者が山の向こう側に煙が出ているのに、

【火を見ざれば煙は一定なれども火にてやなかるらん。】
火が見えないので火事ではないと言い張るのと同じようなものなのです。

【かくのごとくいはん者は】
このような者を目が有るのに何も見えていない不信、謗法〔ほうぼう〕の

【一闡提〔いっせんだい〕の人としるべし。生き盲にことならず。】
一闡提であると人は知るべきです。

【法華経の法師品に、釈迦如来金口〔こんく〕の誠言〔じょうごん〕を】
法華経の法師品には、釈迦牟尼仏が自らの言葉によって、

【も〔以〕て五十余年の一切経の勝劣を定めて云はく】
五十余年の一切経の優劣を定めて、

【「我が所説の経典は無量千万億にして】
「私の説いた経典は、無量千万億であって、

【已〔すで〕に説き今説き当〔まさ〕に説かん。】
過去にも説き、現在も説き、さらに未来にも説くのである。

【而も其の中に於て此の法華経は】
しかし、その中に於いて、この法華経こそが、

【最も為〔こ〕れ難信難解なり」等云云。】
もっとも信じ難く、もっとも理解し難いのである」と説かれています。

【此の経文は但釈迦如来一仏の説なりとも、】
この経文は、ただ釈迦牟尼仏一人が説かれたものではあっても、

【等覚已下は仰ぎて信ずべき上、多宝仏東方より来たりて真実なりと証明し、】
菩薩以下はそれを信じ、多宝如来は、東方より来訪して、その真実を証明し、

【十方の諸仏集まりて】
さらに、すべての方向から仏が集まって、

【釈迦仏と同じく広長舌〔こうちょうぜつ〕を梵天に付け給ひて後、】
釈迦仏と同じくように

【各々国々へかへらせ給ひぬ。】
この法華経が真実であると述べてから、それぞれの国へ帰られたのです。

【已今当〔いこんとう〕の三字は、五十年並びに】
この過去、現在、未来の三文字は、釈迦牟尼仏、五十年の説法と、

【十方三世の諸仏の御経一字一点ものこさず引き載せて、】
すべての仏の経文を一字一句残さずに、

【法華経に対して説かせ給ひて候を、】
法華経と比較されての事であり、

【十方の諸仏此の座にして御判形〔ごはんぎょう〕を加へさせ給ひ、】
それに対してすべての仏がこの場にあって、真実であるとの判を押して、

【各々又自国に還〔かえ〕らせ給ひて、我が弟子等に向かはせ給ひて、】
それぞれ世界に帰ったのであり、もし、その後に自らの弟子に対して、

【法華経に勝れたる御経ありと説かせ給はゞ、】
法華経より優れた経文があると説かれたとしても、

【其の土の所化の弟子等信用すべしや。】
その世界の弟子達の誰が信用するでしょうか。

【又我は見ざれば、月氏・竜宮・四天・日月等の宮殿の中に、】
それでも、インドや竜王や四天王や日月等の宮殿の中に

【法華経に勝れさせ給ひたる経やおはしますらんと疑ひをなさば、】
法華経よりも優れた経文があるかも知れないと疑うのであれば、

【反詰〔はんきつ〕して云へ、されば今の梵釈・日月・四天・竜王は、】
それでは、梵天、帝釈天、日月、四天王、竜王は、

【法華経の御座にはなかりけるか、】
法華経の説かれた場所には、いなかったのでしょうか。

【若し日月等の諸天、法華経に勝れたる御経まします、】
もし、日月や諸天が法華経よりも優れた経文を持つのであれば、

【汝はしらず、と仰せあるならば大誑惑〔おうわく〕の日月なるべし。】
それを私は知らないなどと言うのは、大嘘つきであると言うべきでしょう。

【日蓮せめて云はく、日月は虚空〔こくう〕に住し給へども、】
日蓮は、それを「太陽や月が空に留まって、

【我等が大地に処するがごとくして堕落し給はざる事は、】
私達が住んでいる大地に堕ちずに済んでいるのは、

【上品〔じょうぼん〕の不妄語戒〔ふもうごかい〕の力ぞかし。】
物理の法則が真実であり、まったく嘘ではないか。

【法華経に勝れたる御経ありと仰せある大妄語あるならば、】
もし、法華経より優れた経文があると云う大嘘があるのであれば、

【恐らくはいまだ壊劫〔えこう〕にいたらざるに、】
おそらく宇宙が終わる時ではなくても、

【大地の上にどうとおち〔落〕候はんか。】
大地の上に太陽や月がどっと落ちて、

【無間大城〔むけんだいじょう〕の最下の堅鉄にあらずば】
そのまま、一番下の無間地獄まで落ち、

【留まりがたからんか。大妄語の人は】
やっとそこで止まる事が出来るであろう。大嘘つきでは、

【須臾〔しゅゆ〕も空に処して】
物理の法則さえ間違いとなり、少しの間も太陽や月が空から落ちることなく

【四天下を廻〔めぐ〕り給ふべからずと、せ〔責〕めたてまつるべし。】
地球を周っている事は出来ない」と責めているのです。

【而〔しか〕るを華厳宗の澄観等、真言宗の善無畏・】
それなのに華厳宗の澄観等、真言宗の善無畏、

【金剛智・不空・弘法・慈覚・智証等の大智の三蔵・大師等の、】
金剛智、不空、弘法、慈覚、智証などの三蔵法師や仏教の指導者などが

【華厳経・大日経等は法華経に勝れたりと立て給ふは、】
華厳経や大日経が法華経に優れていると言うのは、

【我等が分斉〔ぶんざい〕には及ばぬ事なれども、】
日蓮の分際では批判は、出来ないのかも知れませんが、

【大道理のを〔推〕す処は、豈〔あに〕諸仏の大怨敵にあらずや。】
物理の法則が間違っていないのであれば、

【提婆〔だいば〕・瞿伽梨〔くがり〕も】
これらは、すべて提婆達多や瞿伽梨など

【ものならず。】
問題にならないほどの諸仏の大怨敵であると言うべきです。

【大天・】
仏滅後百年にインドで仏教教団を分裂させた大天や

【大慢外〔ほか〕にもとむべからず。】
インドの外道で仏法僧を誹謗した大慢よりも、

【彼の人々を信ずる輩はをそろしをそろし。】
このような人々を信じる事は怖ろしい事なのです。


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