日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


報恩抄 13 伝教大師の真言破折


第12章 伝教大師の真言破折

【真言宗と申すは、日本人王】
真言宗と言うのは、日本の

【第四十四代と申せし元正〔げんしょう〕天皇の御宇に、】
第44代元正天皇の時代に

【善無畏三蔵、大日経をわたして】
善無畏三蔵が中国から来て大日経を伝えて、

【弘通せずして漢土へかへる。】
それを弘通せる事なく中国へ戻ったのです。

【又玄昉〔げんぼう〕等、大日経の義釈十四巻をわたす。】
また、玄昉などの僧侶が唐に行って大日経義釈14巻を日本に伝え、

【又東大寺の得清〔とくしょう〕大徳わたす。】
また、東大寺の得清大徳と云う僧侶も真言を日本に伝えました。

【此等を伝教大師御らんありてありしかども】
これらを伝教大師は見て、

【大日経・法華経の勝劣いかんがとをぼしけるほどに、かたがた不審ありし故に、】
はたして大日経は、法華経に優れているのだろうかと不審に思い、

【去ぬる延暦〔えんりゃく〕二十三年七月御入唐〔にっとう〕、】
去る延暦23年7月に唐に行き、

【西明寺の道邃〔どうずい〕和尚、仏瀧〔ぶつろう〕寺の行満等に】
西明寺の道邃和尚や仏瀧寺の行満などに

【値ひ奉りて止観円頓の大戒を伝受し、】
会って法華経の摩訶止観の法門と円頓の大戒を伝受して、

【霊感寺の順暁〔じゅんぎょう〕和尚に値ひ奉りて真言を相伝し、】
さらに霊感寺の順暁和尚に会って真言を相伝し、

【同じき延暦二十四年六月に帰朝し、】
同じく延暦24年6月に日本に帰って来て、

【桓武天王に御対面、宣旨〔せんじ〕を下して】
桓武天王に対面し、天皇の命令によって

【六宗の学匠に止観・真言を習はしめ、同七大寺にをかれぬ。】
六宗派の学生達に法華経の摩訶止観と真言を教え、これを七大寺に置いたのです。

【真言・止観の二宗の勝劣は漢土に多くの子細あれども、】
真言と摩訶止観の二宗派の優劣は、中国においても多くの議論があり、

【又大日経の義釈には理同事勝とか〔書〕きたれども、】
大日経義釈にも一念三千について理同事勝と書かれているけれども、

【伝教大師は善無畏三蔵のあやまりなり、】
伝教大師は、これらは、すべて善無畏三蔵の誤りであって、

【大日経は法華経には劣りたりと知ろしめして、】
大日経は、法華経に劣っており、

【八宗とはせさせ給はず。】
真言宗を入れて七宗派から八宗派にはしなかったのです。

【真言宗の名をけづりて法華宗の内に入れ七宗となし、】
このように真言宗の名を削って天台宗を六宗派に入れて七宗派とし、

【大日経をば法華天台宗の傍依経となして、華厳・大品般若・涅槃等の例とせり。】
大日経をこの天台宗の証明とし、華厳、大品般若、涅槃等と同列に扱ったのです。

【而れども大事の円頓の大乗別受戒の大戒壇を、】
しかし、当時は、大事な円頓の大乗別受戒の大戒壇を

【我が国に立てう立てじの諍論〔じょうろん〕がわづらはしきに依りてや、】
日本に建てるか建てないかと云う議論があった為か、

【真言・天台二宗の勝劣は弟子にも】
同じく一念三千を説く真言宗と天台宗の優劣については、

【分明にをし〔教〕え給はざりけるか。】
それほど明確には、それを教える事がなかったのです。

【但し依憑集〔えひょうしゅう〕と申す文〔ふみ〕に、】
ただし、依憑集の中の文章に、

【正しく真言宗は法華天台宗の正義を偸〔ぬす〕みとりて、】
正しくは、真言宗は、天台宗の一念三千の正義を盗み、

【大日経に入れて理同とせり。】
大日経に入れて理同と言っているのであると書かれています。

【されば彼の宗は天台宗に落ちたる宗なり。】
そうであれば当然、真言宗は、天台宗に敗れているのです。

【いわ〔況〕うや不空三蔵は善無畏・金剛智入滅の後、】
いわんや不空三蔵は、善無畏、金剛智の入滅の後に

【月氏に入りてありしに、竜智菩薩に値ひ奉りし時、】
インドに行き、竜智菩薩に会った時に、

【月氏には仏意〔ぶっち〕をあきらめたる論釈なし。】
インドには、釈迦牟尼仏の本意をあらわした経論や解釈書がない。

【漢土に天台という人の釈こそ邪正をえらび、】
中国には、天台大師と言う優れた人がいて、その解釈書こそ正邪をわきまえ、

【偏円をあきらめたる文〔ふみ〕にては候なれ。あなかしこ、あなかしこ、】
まったく矛盾がない文章であると告げて、竜智菩薩は、それを聞いて、願わくば

【月氏へ渡し給へとねんごろにあつら〔誂〕へし事を、】
それをインドに持って来て欲しいと必死に頼んだのを、

【不空の弟子含光〔がんこう〕といゐし者が妙楽大師にかた〔語〕れるを、】
不空の弟子である含光と言う者が、妙楽大師に語った事が、

【記の十の末に引き載せられて候を、この依憑集に取り載せて候。】
法華文句記十巻の末にあり、それをこの依憑集に記載されているのです。

【法華経に大日経は劣るとしろしめす事、伝教大師の御心顕然〔けんねん〕なり。】
このように大日経は法華経に劣ると云う伝教大師の考えが明らかなのです。

【されば釈迦如来・天台大師・妙楽大師・伝教大師の御心は】
そうであればこそ、釈迦如来、天台大師、妙楽大師、伝教大師の考えは、

【一同に大日経等の一切経の中には、】
同じであり、大日経などの一切経の中で、

【法華経はすぐれたりという事は分明なり。】
法華経が最も優れている事は明らかなのです。

【又真言宗の元祖という竜樹菩薩の御心もかくのごとし。】
それはまた真言宗の元祖と云うべき竜樹菩薩の考えもまた同じなのです。

【大智度論を能〔よ〕く能く尋ぬるならば、此の事分明なるべきを、】
大智度論を読んでみると、この事は明らかなのに、

【不空があやまれる菩提心論に皆人ばかされて、】
不空の間違った菩提心論に人々はすっかりばかされて、

【此の事に迷惑せるか。】
この事に未だに迷い惑い続けているのです。


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