日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


報恩抄 33 略して題目肝心を明示


第32章 略して題目肝心を明示

【問うて云はく、】
それでは質問しますが、

【法華経一部八巻二十八品の中に何物か肝心なる。】
法華経一部、八巻、二十八品の中でどれが一番、大事なのでしょうか。

【答へて云はく、】
それに答えると、

【華厳〔けごん〕経の肝心は大方広仏〔だいほうこうぶつ〕華厳経、】
華厳経で一番大事なのは大方広仏華厳経であり、

【阿含〔あごん〕経の肝心は仏説中阿含経、】
阿含経で一番大事なのは、仏説中阿含経であり、

【大集経の肝心は大方等大集経、般若〔はんにゃ〕経の肝心は】
大集経で一番大事なのは、大方等大集経であり、

【摩訶〔まか〕般若〔はんにゃ〕波羅蜜〔はらみつ〕経、】
般若経で一番大事なのは、摩訶般若波羅蜜経であり、

【双観〔そうかん〕経の肝心は仏説無量寿〔むりょうじゅ〕経、】
双観経で一番大事なのは、仏説無量寿経であり、

【観経〔かんぎょう〕の肝心は仏説観無量寿経、】
観経で一番大事なのは、仏説観無量寿経であり、

【阿弥陀〔あみだ〕経の肝心は仏説阿弥陀経、】
阿弥陀経で一番大事なのは、仏説阿弥陀経であり、

【涅槃〔ねはん〕経の肝心は大般〔だいはつ〕涅槃経。】
涅槃経で一番大事なのは、大般涅槃経であり、

【かくのごとくの一切経は皆如是我聞〔にょぜがもん〕の上の題目、】
このように一切経は、すべて如是我聞の上の題名が

【其の経の肝心なり。】
その経門の一番大事なものなのです。

【大は大につけ小は小につけて】
大乗経は、大乗経として、小乗経は、小乗経として

【題目をも〔以〕て肝心とす。】
題名を以って一番大事なものとするのです。

【大日〔だいにち〕経・金剛頂〔こんごうちょう〕経・蘇悉地〔そしっじ〕経等】
大日経、金剛頂経、蘇悉地経なども、

【亦復かくのごとし。】
また同じく経文の題名が一番大事なものとするのです。

【仏も又かくのごとし。】
仏についても同じ事が言えます。

【大日如来・日月灯明仏・燃灯〔ねんとう〕仏・大通仏・】
大日如来、日月灯明仏、燃灯仏、大通智勝仏、

【雲雷音王〔うんらいおんのう〕仏、】
雲雷音王仏など、

【是等も又名の内に其の仏の種々の徳をそなへたり。】
これらの名前にその仏の種々の徳をそなえているのです。

【今の法華経も亦もってかくのごとし。如是我聞の上の妙法蓮華経の五字は】
現在の法華経もまた同じなのです。如是我聞の上の妙法蓮華経の五字は、

【即一部八巻の肝心、】
そのまま一部、八巻の中で一番大事なものであり、

【亦復一切経の肝心、】
また、すべての経文の中で一番大事なものであり、

【一切の諸仏・菩薩・二乗・天人・修羅・竜神等の頂上の正法なり。】
すべての仏、菩薩、二乗、天人、修羅、竜神などの最上の正法であるのです。

【問うて云はく、】
それでは、質問しますが、

【南無妙法蓮華経と心もしらぬ者の唱ふると】
南無妙法蓮華経とその経文の意味さえ知らぬ者が唱えるのと

【南無大方広仏華厳経と心もしらぬ者の】
南無大方広仏華厳経とその経文の意味さえ知らぬ者が

【唱ふると斉等なりや、浅深〔せんじん〕の功徳差別せりや。】
唱えるのと同じなのでしょうか、それともその差があるのでしょうか。

【答へて云はく、浅深〔せんじん〕等あり。】
それに答えると、浅深があります。

【疑って云はく、其の心如何〔いかん〕。】
いったい、それは、どういう意味でしょうか。

【答へて云はく、小河は露と涓〔しずく〕と】
それに答えると、小川は、露〔つゆ〕や雫〔しずく〕や

【井と渠〔みぞ〕と江とをば収むれども】
井戸や溝や池の水は、収める事が出来るけれども、

【大河ををさ〔収〕めず。】
大河の水を収める事が出来ません。

【大河は露乃至小河を摂〔おさ〕むれども】
大河は、露や小川の水を収める事は出来るけれども、

【大海ををさ〔収〕めず。】
大海の水を収める事は出来ない。

【阿含経は井江等露涓ををさ〔収〕めたる小河のごとし。】
阿含経は、その中の小川のようなものなのです。

【方等経・阿弥陀経・大日経・華厳経等は小河をおさむる大河なり。】
方等経、阿弥陀経、大日経、華厳経などは、小川を収める大河であるのです。

【法華経は露・涓・井・江・小河・大河・天雨等の】
法華経は、露、雫、井戸、池、小川、大河、雨などの

【一切の水を一渧〔いってい〕ももらさぬ大海なり。】
すべての水を一滴も残さず収める大海のようなものなのです。

【譬へば身の熱き者の大寒水の辺〔ほとり〕にい〔寝〕ねつればすゞ〔涼〕しく、】
例えば身体が熱い者が冷たい水の近くに寝そべれば涼しく感じ、

【小水の辺に臥〔ふ〕しぬれば苦しきがごとし。】
生ぬるい水の近くに寝ても、その熱さが続いて苦しいようなもので、

【五逆謗法の大一闡提〔いっせんだい〕の人、】
五逆罪の者や大謗法の一闡提の人は、

【阿含・華厳・観経・大日経等の小水の辺にては】
阿含、華厳、観経、大日経などの生ぬるい水では、

【大罪の大熱さん〔散〕じがたし。】
大罪の大熱を冷ます事が出来ないのです。

【法華経の大雪山〔だいせっせん〕の上に臥しぬれば五逆・誹謗〔ひぼう〕・】
法華経の大雪山の上によって、五逆罪の者や大謗法の

【一闡提等の大熱忽〔たちま〕ちに散ずべし。】
一闡提の人は、大熱をたちまちに冷やす事が出来るのです。

【されば愚者は必ず法華経を信ずべし。】
そうであれば愚かな者は、必ず法華経を信じるべきなのです。

【各々経々の題目は易き事同じといへども、】
それぞれ経文の題名を唱える事は同じなのですが、

【愚者と智者との唱ふる功徳は天地雲泥なり。】
愚者と智者とが唱える功徳は、天地雲泥なのです。

【譬へば大綱は大力も切りがたし。】
例えば、大きな綱は、大きな力の者も切る事は難しいのですが、

【小力なれども小刀をもてばたやすくこれをきる。】
小さな力の者も小刀を持ってすれば、たやすくこれを斬る事が出来ます。

【譬へば堅〔かたき〕石〔いし〕をば鈍刀をもてば】
例えば、硬き石を鈍い刀で割ろうとすれば、

【大力も破〔わ〕りがたし。】
大きな力の者でもなかなか割れないのですが、

【利剣をもてば小刀も破りぬべし。】
鋭い剣を持てば小さな刀でも破る事が出来るのです。

【譬へば薬はしらねども服すれば病やみぬ。】
例えば、薬は、その成分を知らなくても飲めば病気は治るが、

【食は服せども病やまず。】
ただ食べ物をとるだけでは病気は治らないのです。

【譬へば仙薬〔せんやく〕は命をのべ、】
例えば、優れた薬は、命を伸ばし、

【凡薬は病をいやせども命をのべず。】
普通の薬は、病気を癒〔いや〕したとしても命を伸ばす事は出来ないのです。


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