日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


南条時光御息文 24 上野殿御返事(塩一駄書)

【上野殿御返事 弘安元年九月一九日 五七歳】
上野殿御返事 弘安元年9月19日 57歳御作


【塩一駄・はじかみ〔生姜〕送り給び候。】
塩一駄、生姜〔しょうが〕を御送り頂きました。

【金〔こがね〕多くして日本国の沙〔いさご〕のごとくならば、】
金が多くあって、日本にある砂のようであったならば、

【誰かたから〔宝〕として、はこ〔箱〕のそこ〔底〕におさむべき。】
誰が、それを宝として、金庫の奥に大切に納めておくでしょうか。

【餅多くして一閻浮提の大地のごとくならば、】
餅が多くて、地球の大地のようであったならば、

【誰か米の恩をおも〔重〕くせん。今年は正月より日々に雨ふり、】
誰が米の価値を尊く思うでしょうか。今年は、正月から毎日、雨が続き、

【ことに七月より大雨ひま〔暇〕なし。】
とくに七月に入ってからは、大雨が間断なく降り続いています。

【このところは山中なる上、南は波木井河、北は早河、東は富士河、】
ここは、山の中である上に、南には波木井河、北には早河、東には富士河が流れ、

【西は深山なれば、長雨・大雨、時々日々につゞく間、】
西は、深い山になっているので、このように長く大雨が毎日、続いてしまうと、

【山さ〔裂〕けて谷をうづ〔埋〕み、石ながれて道をふせ〔防〕ぐ。】
山が裂けて、谷を埋め、石が流れて、道を塞いで、しまいます。

【河たけ〔猛〕くして舟わたらず。】
河の水の勢いが激しくて、船も渡る事ができません。

【富人なくして五穀とも〔乏〕し。商人なくして人あつ〔集〕まる事なし。】
富める人がいないので五穀も乏しく、商人が来ないので人が集まる事もないのです。

【七月なんどはしほ〔塩〕一升をぜに〔銭〕百、】
そのため、七月などは、銭百文で塩一升を、

【しほ五合を麦一斗にか〔換〕へ候ひしが、】
また、麦一斗で塩五合と取り換えましたが、

【今はぜんたい〔全体〕しほ〔塩〕なし。何を以てかか〔換〕うべき。】
今は、その塩も全くなくなり、何をもっても、買うことができず、

【みそ〔味噌〕もた〔絶〕えぬ。小児のち〔乳〕をしの〔慕〕ぶがごとし。】
味噌もなくなってしまい、幼児が乳を求めるような状態でした。

【かゝるところにこのしほを一駄給びて候。】
このような時に、この塩一駄を御送りくださったのです。

【御志、大地よりもあつく虚空よりもひろし。】
その御志は、大地よりも厚く、大空よりも広く、

【予が言は力及ぶべからず。】
とても、言葉では、言い表すことはできません。

【たゞ法華経と釈迦仏とにゆづ〔譲〕りまいらせ候。】
ただ、法華経と釈迦牟尼仏の言葉に御譲りするだけです。

【事多しと申せども紙上にはつ〔尽〕くしがたし。】
申し上げたいことは、多くありますが、手紙では、申し尽くし難く思います。

【恐々謹言。】
恐れながら謹んで申し上げます。

【弘安元年九月十九日   日蓮花押】
弘安元年9月19日   日蓮花押

【上野殿御返事】
上野殿御返事


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