日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


南条時光御息文 44 南条殿御返事(鶏冠書)

【南条殿御返事 弘安四年九月一一日 六〇歳】
南条殿御返事 弘安4年9月11日 60歳御作


【塩一駄・大豆一俵・とっさか〔鶏冠菜〕一袋・酒一筒給び候。】
塩一駄、大豆一俵、鶏冠海苔〔とさかのり〕一袋、酒一筒を頂きました。

【上野国より御帰宅候後は未だ見参〔げんざん〕に入らず候。】
上野国から、御帰宅されて後は、いまだに御会い出来ず、

【床敷〔ゆかしく〕存じ候ひし処に、】
御様子を知りたく思っていたところ、

【品々の物ども取り副〔そ〕へ候ひて御音信〔おとずれ〕に預かり候事】
いろいろな品物を添えて、御便りを寄せられた事は、

【申し尽くし難き御志にて候。】
まことに申し尽くし難い御志です。

【今申せば事新しきに相似て候へども、】
今、言うと何か新しい事であるように思われますが、

【徳勝〔とくしょう〕童子は仏に土の餅を奉りて、阿育大王と生まれて、】
徳勝童子は、仏に土の餅を差し上げたことによって、阿育大王と生まれ、

【南閻浮提を大体知行〔ちぎょう〕すと承〔うけたまわ〕り候。】
南閻浮提を、ほとんど支配したと承っています。

【土の餅は物ならねども、仏のいみじく渡らせ給へば、】
土の餅は、たいしたものでは、ないけれども、仏が尊い人であるので、

【かくいみじき報〔むく〕いを得たり。然るに釈迦仏は、】
このような素晴らしい果報を得たのです。しかしながら釈迦牟尼仏は、

【我を無量の珍宝を以て億劫の間〔あいだ〕供養せんよりは、】
自らを計り知れないほどの珍しい宝で、長遠の間、供養するよりも、

【末代の法華経の行者を一日なりとも供養せん功徳は、百千万億倍過ぐべしとこそ】
末法の法華経の行者を一日であっても、供養する功徳は、百千万億倍優れていると

【説かせ給ひて候に、法華経の行者を心に入れて】
説かれているのですから、あなたが法華経の行者を、

【数年供養し給ふ事有り難き御志かな。】
心から数年間、供養された事は、実に有り難い御志であるのです。

【金言の如くんば定めて後生は霊山浄土に生まれ給ふべし。】
仏の金言の通りであれば、必ず後生は、霊山浄土に生まれられる事でしょう。

【いみじき果報かな。】
なんと素晴らしい果報でしょうか。

【其の上此の処〔ところ〕は人倫を離れたる山中なり。】
その上、ここは、人間社会から離れた山の中です。

【東西南北を去りて里もなし。かゝるいと心細き幽窟〔ゆうくつ〕なれども、】
東西南北とも、人里も遠く離れて、このような大変心細い、山奥の住み家ですが、

【教主釈尊の一大事の秘法を霊鷲山にして相伝し、】
教主釈尊の一大事の秘法を霊鷲山において相伝し、

【日蓮が肉団の胸中に秘して隠し持てり。】
日蓮の肉団の胸中に秘して、隠し持っているのです。

【されば日蓮が胸の間は諸仏入定〔にゅうじょう〕の処なり、】
それゆえ、日蓮の胸の間は、諸仏の入定〔にゅうじょう〕の所であるのです。

【舌の上は転法輪の所、喉〔のんど〕は誕生の処、】
舌の上は、転法輪の場所、喉は、誕生の場所、

【口中〔こうちゅう〕は正覚〔しょうがく〕の砌〔みぎり〕なるべし。】
口の中は、正覚〔しょうがく〕の場所であるはずなのです。

【かゝる不思議なる法華経の行者の住処なれば、】
このように不思議な法華経の行者の住み家ですから、

【いかでか霊山浄土に劣るべき。】
どうして霊山浄土に劣ることがあるでしょうか。

【法妙なるが故に人貴し、】
法華文句に法が妙であるが故に、その法を持〔たも〕った人は貴く、

【人貴きが故に所尊しと申すは是なり。】
人が貴いが故に、その人がいる所も尊いとあるのは、この事なのです。

【神力品に云はく】
法華経如来神力品には、

【「若しは林中に於ても、若しは樹下〔じゅげ〕に於ても、】
「もしくは、林の中においても、もしくは、樹の下においても、

【若しは僧坊に於ても、乃至般〔はつ〕涅槃したまふ」云云。】
もしくは、僧坊においても、乃至、般涅槃されるであろう」と説かれています。

【此の砌に望〔のぞ〕まん輩〔やから〕は無始の罪障忽〔たちま〕ちに消滅し、】
この場所に来る人は、無始以来の罪障がたちまちのうちに消滅し、

【三業の悪転じて三徳を成ぜん。】
身口意の三業の悪は、転じて法身、般若、解脱の三徳と成るのです。

【彼の中天竺〔ちゅうてんじく〕の】
彼のインドの

【無熱池〔むねっち〕に臨みし悩者〔のうしゃ〕が、】
ヒマラヤの奥地にあると言う湖に行った悩み深き者が、

【心中の熱気を除愈〔じょゆ〕して充満其願〔じゅうまんごがん〕】
心の中の熱気を除き癒〔い〕やされて、その思いを全て満足し、

【如清涼池〔にょしょうりょうち〕とうそぶきしも、】
まるで清涼池のようだと言いましたが、

【彼此〔ひし〕異なりといへども、】
それとこれと、場所は、異なっても、

【其の意〔こころ〕は争〔いか〕でか替〔か〕はるべき。】
その意味する所が、なんで変わる事があるでしょうか。

【彼の月氏の霊鷲山は本朝此の身延の嶺〔みね〕なり。】
かのインドの霊鷲山は、日本の、この身延の山のことなのです。

【参詣遥〔はる〕かに中絶せり。】
参詣が久しく途絶えています。

【急々に来臨〔らいりん〕を企〔くわだ〕つべし。是にて待ち入って候べし。】
急ぎ来られるように取り計ってください。こちらで待っております。

【哀〔あわ〕れ哀れ申しつくしがたき御志かな、御志かな。】
なんと申し尽くし難い御志である事でしょう。

【弘安四年九月十一日   日蓮花押】
弘安4年9月11日   日蓮花押

【南条殿御返事】
南条殿御返事

【御使ひの申し候を承り候。】
御使いの者に話を受け承りました。

【是の所労〔しょろう〕難儀のよし聞こえ候。】
近ごろ、病気が大変であることを御聞きしました。

【いそぎ療治〔りょうじ〕をいたされ候ひて御参詣有るべく候。】
急いで治療されて、御参詣ください。


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